一般的に新卒の場合はそのほとんどが正社員を目指しますが、薬剤師の場合はパートや派遣といった勤務形態であっても、比較的安定した収入を得ることが可能となっています。
そのため薬剤師の中には正社員と非正規社員、どちらで働くべきか迷う人も少なくないと言えます。
そのような悩みを持つ薬剤師方のために、今回は正社員と非正規社員の違いについて詳しく解説していきたいと思います。
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正社員薬剤師は安定して働ける!賞与や支援制度などメリットがたくさん!
薬剤師は正社員をはじめパート・派遣といった働き方も選ぶことができます。
また働き方によって給料面・仕事内容・待遇についても、大きな違いがありますので、それぞれの働き方での特徴をよく把握しておく必要があります。
ここではまず正社員として働く際のメリットと、パートや派遣といった非正規社員との違いについて解説していきたいと思います。
正社員勤務は非正規社員よりも収入面で安定している
正社員の薬剤師として働くメリットはいくつかありますが、最も大きなメリットと言えるのが収入です。
正社員の場合は年収がすでに決まっています。一方でパートや派遣の場合は、勤務時間や日数によって変動するので、正社員よりも安定性に欠けます。
一律の年収相場が決まっていないので転職で年収アップしやすい
また正社員で働いている薬剤師の方が、転職で年収アップを狙いやすくなります。
パート・派遣の薬剤師であれば、時給1,800円からスタートなど、ある程度の相場が決められているのに対し、正社員の場合は年収の相場が決まっておらず、職場によって設定が異なっています。
そのため正社員として勤めていた場合、特に調剤経験がある薬剤師は、他の職場への転職で年収をアップさせることも比較的容易となっています。
職場で支給している手当や支援制度などの福利厚生を適用できる
正社員薬剤師には福利厚生を適用でき、パート・派遣薬剤師は適用することができない点も大きな違いであると言えます。
福利厚生では残業手当・家賃補助などがありますが、職場からこれらの手当を受け取ることができるのはやはり大きいです。
手当も収入と一緒に支給されますので、実質的に基本年収よりも多くの手取りを受け取れることになります。
また正社員であれば賞与を受け取ることもできます。パート・派遣だと受け取ることができないので、この点も収入面で大きく差が生まれる要因となっています。
職場から子育て中や復職したい薬剤師に嬉しい支援を受けられる
また育休や産休をはじめ、時短勤務が導入されている場合は、結婚して子育てに忙しい薬剤師にとっても大いに助かります。
研修でも新人研修のほかに復職者向けの研修が受けられるなら、子育てしていたママ薬剤師も復帰しやすくなります。
正社員であれば職場が実施している福利厚生を全て受けることができますが、パートや派遣の薬剤師である場合は、全く利用できないか一部だけの利用しかできない場合がほとんどです。
正社員薬剤師はパートや派遣よりも社会的信用がある
薬剤師は正社員・パート・派遣、いずれの働き方であっても、比較的安定した収入を得やすい職業ですが、社会的信用という面ではやはり正社員の方が勝っていると言えます。
不動産購入時などに必要となる高額なローン審査に申請できる
社会的信用が弱いと不便な面もあります。たとえば家などの不動産を購入するときは、ローン審査に通る必要がありますが、パートや派遣だと落とされてしまう可能性が高くなります。
もちろんローン審査も金融機関ごとに基準が異なるので、正社員であれば確実に通るというわけではありませんが、それでも正社員の方がパートや派遣よりも、審査が下りる可能性は断然高くなります。
グレードの高いクレジットカードの審査でも正社員の方が有利になる
またクレジットカードを作る際にも同じことが言えます。楽天カードをはじめとした流通系のクレジットカードであれば、どの雇用形態であっても比較的容易に作れますが、三井住友VISAカードなどの銀行系カードや、アメックスなどのグレードが高いカードとなると、パートや派遣では審査に落とされる可能性が高くなります。
しかし正社員の薬剤師であれば、カード会社に社会的信用が高いと判断され、スムーズにカードを発行することもできるようになります。
正社員薬剤師は重要な仕事を任されるのでスキルアップに繋がる
スキルアップの面でも正社員の方が有利であると言えます。一般的にパートや派遣の薬剤師よりも、正社員の薬剤師に重要な仕事が任されるようになっています。
重要な仕事をこなしていくうちに、当然薬剤師としてのスキルも上がっていくようになります。
たとえば商品の在庫管理やスタッフのシフト調整といった仕事は、パートでなく正社員薬剤師が担当するのが一般的です。
正社員薬剤師である場合は調剤業務のほか、これらのような店舗の運営にかかわる業務にも携わることになります。
非正規社員では正社員薬剤師ほど責任ある仕事は回ってこない
パートや派遣の薬剤師である場合は、運営に関わる業務を任せられることはありません。
そのため正社員とパート・派遣では、仕事のやりがいにも大きな違いがあると言えるでしょう。
ただ薬剤師は転職が多いため、2年~3年ほど正社員として働けば、管理薬剤師になれるケースも少なくありません。
小さい店舗で正社員として働くのであれば、さらに早く管理薬剤師に昇格できる可能性もあります。
キャリアアップを目指すならまず正社員として働くことが前提となる
また管理薬剤師の上に行くとエリアマネージャーとして、複数の店舗を任せられるようになります。
これらのような役職に就くことを望むのであれば、正社員であることが大前提となります。
正社員として働く場合はこのように、薬剤師として上のキャリアを目指すことができるというメリットがあります。
逆にパート・派遣では正社員ほどの仕事内容を任せられることはありませんので、スキルアップ・キャリアアップを目指すには難しい環境と言えます。
雇用条件では正社員薬剤師が勝っている面が多々あるがデメリットもある
正社員薬剤師として働くメリットはたくさんありますが、反対にデメリットとなる面もあります。
またパート・派遣の雇用形態では、正社員勤務のデメリットをカバーできる特徴があるため、それらも交えてご紹介していきたいと思います。
正社員の給料を時給換算すると非正規社員よりも安い!?
給料が安定するという点は正社員として働く大きなメリットの一つとなっていますが、時給換算するとあまり時給が高くないという意外なデメリットがあります。
実は時給を比較するとパートや派遣で働く薬剤師の方が、遥かに高いという特徴があるのです。
一般的には考えられない現象ですが、管理薬剤師の役職に就いていても、毎月の給料が毎日出勤しているパート薬剤師よりも低く、ボーナスが出てようやくパートの年収を超えるということもあるようです。
パート・派遣の時給は一般よりもかなり高時給となっている
一方でパート・派遣などの非正規雇用で働く薬剤師は、時給が高いというメリットがあります。
パートや派遣で働く薬剤師の時給は、地域や職種ごとに違いはあるものの、平均の時給相場は以下のようになります。
時給相場 | |
パート薬剤師 | 1,800円~2,500円 |
派遣薬剤師 | 2,500円~3,500円 |
これらの金額はあくまで平均値ですので、職場や職種によっては時給で大きな違いが出る場合もあります。
同じ薬剤師の仕事でも勤務する職場によっては、時給で1,000円以上の差があったなんてことも。
このようにパート・派遣の薬剤師で働く場合は、時給差が大きいという面があるので、しっかりと職場の雇用条件を吟味する必要があるでしょう。
正社員薬剤師は店舗運営で任される仕事や残業が多くなる
正社員薬剤師は上のポジションに行くほど、店舗の運営やスタッフ管理を任されるようになりますが、それらの業務は責任が付きまとうので負担も大きくなります。
業界内でも管理薬剤師の手当は高いと言われていますが、業務上における責任や仕事量も比例して多くなるということも含まれています。
運営などの重要な仕事を担当するようになると、その分こなすべき雑多な仕事も増えます。
正社員薬剤師が担当する店舗運営の仕事内容
正社員が行う管理業務は、上のポジションに行くほど幅も広がっていきます。
- パート・派遣のシフト調節
- 店内の掃除やゴミ出し
- 患者さんの自宅や福祉施設へ訪問し服薬指導を行う
- 報告書類の作成(チェーン店の場合)
- 薬歴管理やレセプト入力を行う
これらの多様な業務は全て正社員が行うのが基本となっており、パート・派遣の薬剤師が担当することはありません。
仕事量の割に残業代が出ないのでさらに時給が低くなるという結果に
このように正社員薬剤師はパート・派遣の薬剤師よりも、担当する業務が多岐に渡るので、サービス残業が増える傾向にあります。
しかし一般的な企業とは異なり薬局や病院では、残業手当が出ないことも珍しくないので、こうした事実も正社員の時給が、パートや派遣よりも少ないとされる要因となっています。
残業が多い割に相応の手当が付かないことに悩む管理薬剤師も少なくありません。
パート・派遣の薬剤師である場合は、時給制なので残業をする必要が無く、定時で帰宅することが可能となっています。
薬剤師における正社員と非正規社員の違いはしっかりと把握しておこう!
それでは最後に正社員と非正規社員それぞれの特徴についてまとめてみましょう。
正社員薬剤師のメリット・デメリット
メリット
- 非正規雇用よりも安定した収入が期待できる
- 時給制のように一律の相場が無いので転職でも年収アップできる
- 手当・賞与・支援制度などの福利厚生が適用できる
- パートや派遣よりも社会的信用があり、ローン審査でも有利になる
- 重要な仕事を任されることでスキルアップ・キャリアアップできる
デメリット
- 給料を時給に換算するとパートや派遣よりも時給が安い
- 店舗運営のための雑多な仕事が増え残業も多くなる
パート・派遣薬剤師のメリット・デメリット
メリット
- 正社員よりも遥かに良い時給で働ける
- 基本的に残業が無く定時で帰ることができる
- 時短勤務ができるのでプライベートの時間を確保しやすい
- 責任の思い仕事を任されることはないので負担が少ない
デメリット
- 責任ある仕事は正社員がするのでスキルアップしにくい
- パート・派遣のままでキャリアアップを目指すのは難しい
- 手当・賞与などの福利厚生が適用されない
- 社会的信用が正社員よりも劣るのでローン審査なでは不利になりやすい
薬剤師の仕事もどのような働き方をするかで、メリット・デメリットが異なると言えます。
基本的に多くの薬剤師は正社員勤務をしていますが、結婚して子育て期間に入ると、家庭の時間を確保しやすいパートや、派遣の仕事にシフトする方が多いようです。
薬剤師の場合は必ずしも正社員で働くことが正しいとは限らない
一般的には正社員で働くことが正しいような認識が通っていますが、薬剤師の場合は正社員の時給がパート・派遣の薬剤師よりも低いことが珍しくないので、収入面では必ずしも正社員であることが正解であることは限りません。
給料を家計の足しにすることを優先するなら、パートや派遣の方が効率よく稼げる可能性が高いでしょう。
ただ、仕事でのやりがいや福利厚生などの待遇では、正社員が優れていると言えます。
キャリアや収入をはじめ、待遇・時間の取りやすさなど、総合的に考えた上で自分の理想に近い条件を考えてみてください。
また職場によって給料や待遇の内容はかなり異なるので、求人を探す際にはこの点にも注意して探すように心がけてくださいね。